学校日記

【校長のつぶやき】午後は教育講演会(令和6年8月22日・木)

公開日
2024/08/22
更新日
2024/08/22

校長のつぶやき

22日(木)の午後は、小田原市・足柄下三町の教職員を対象とした教育講演会がありました。

三の丸ホールが会場ですが、各校およそ半数ずつ会場参加とオンライン視聴とに分かれました。

私は三の丸ホールで聴きました。

演題は「社会の変化とこれからの学校教育~主体性と当事者意識~」、講師は横浜創英中学校・高等学校元校長の工藤勇一先生です。

工藤先生は、山形県・東京都の公立中学校教員、教育委員会勤務等を経て、教育再生実行会議委員、経済産業省「EdTech」委員、文部科学省「教育長・校長プラットフォーム」発起人などの公職も務めていらっしゃいます。

千代田区立麹町中学校校長就任時には、定期テスト・宿題廃止、固定担任制廃止、服装・頭髪指導の廃止など、これまで「当たり前」とされてきたことを覆すような改革にも取り組まれました。

講演の主な内容は、次のとおりです。


日本の学校教育は、「過度な競争と圧力」「画一的な教育と批判的思考力の欠如」「生徒の多様性への対応不足」「教師の負担へのサポート不足」などが国際的に指摘されている。

何より大切にすべきは「主体性・当事者意識」である。


日本の教育は「与え続ける教育」を行ってきたため、子供たちは、主体性を失い、当事者意識がなく、自己肯定感・幸福度が低くなっている。

手をかければかけるほど子供は自律できなくなり、自分がうまくいかないことを誰かのせいにするようになる。主体性を失い、自分も他人も嫌いになり、不安な気持ちになる。

本来、教育の目的は「自立した子供を育成する」ことにあるはずだが、そのための手段である「基礎学力を身に付けさせる」が目的となっている(手段の目的化)。

宿題は自律を失わせる象徴的なもの。たくさんの時間だけが奪われ、学力は何も変わっていない。

大人の言うことをきく従順な子供たちを育てようとしてきた。

明治維新から150年間も、「何を教えて」「どう教えるか」という教師側の立場から教育を考えてきた。

これからの時代は、「何を学んで」「どう学ぶか」という学ぶ側の立場から教育を考えていくことが大事。

個別最適な学びは子供たちが決める。


自律する力を育てるには、「心理的安全性」と「自己決定」が大切。

「心理的安全性」を保障するためのポイントの一つは「失敗が許される環境づくり」(自己決定が重要!)。

その際、「どうしたの?」「君はどうしたいの?」「何を支援してほしいの?」の3つの言葉がけが有効。

自己決定を積み重ねていく。

もう一つのポイントは「環境に強い脳をつくる(メタ認知能力)」。

自分をコントロールすることにつながる。

しかし、人間は自分をコントロールすることが難しい。

繰り返した行動によって「無意識」が作られ、その「無意識」が自分を動かしている。

固定化した「無意識」を変えるには、「ルーティン」と「モデリング」が有効。

自分を見つめ、自分だけのしかけを作るとよい。(忘れない工夫、思い出す工夫)


「当事者意識」をもつために必要なスキルは「対立を対話で解決するスキル」。

大人が警察署・裁判所になると解決できなくなる。

大人は「仲良くさせなきゃ」と意識しすぎて、子供の「当事者意識」を奪っている。

みんな多様性の中で生きている(社会も学校・学級も…)…ダイバーシティ。

人はみんな違っているので、時折対立が生じる。

対立を「思いやりの心」で解決しようとするのは乱暴。

対話で解決するスキルを身に付ける。

対立する子供たちに当事者意識をもたせるために、まずは感情を抑え、利害の対立に注目させる。

共通目的は平和。このとき大人は通訳に徹する。

「みんな仲良く」の勘違い…人は、仲良くすることは簡単ではない。でも、仲良くできるようになったら素敵。

「多数決」の勘違い…マイノリティ(少数派)は切り捨てるのではなく、一人残らず「いいね」と言える答えを見つけよう!


人は、生まれながら主体性をもっている。生まれた時の主体性を奪わない。

多様性の中で当事者意識を育てる。

厳しく𠮟る教育も甘やかす教育も、自己決定させていないことは同じ。人のせいにする子供が育つ。

大人はジャッジをしない。子供自身の深い思考と自己決定を支えるために「どうしたの?」「君はどうしたいの?」「何を支援してほしいの?」の3つの言葉がけをしていく。


長くなりましたが、ポイントとなるようなことを羅列してみました。

私が考える教育観も工藤先生と通ずるもの、共感できることが多々あります。

本校の職員にも折に触れ、同様のことを少しずつですが話してきたこともあります。

今日の講演を聴いて、本校の職員も様々な思いをもったことでしょう。

工藤先生と同じことはなかなかできませんが、近づけることはないか、本校の職員と共に考え、今後の学校経営に反映できればと思っています。


本日、午前中にも児童指導研修を校内で行っていました。

私は出張があったために参加していませんが、いじめ未然防止という視点で有意義な研修となったようです。

(ホームページの「児童指導研修」の記事は、教頭がアップしてくれました。)

教職員も、夏休みモードから課業モードへと切り替えていきます。