「金盞香」
- 公開日
- 2015/11/18
- 更新日
- 2015/11/18
校長
「金盞香」
二十四節気の立冬も七十二候(しちじゅうにこう)の末候、第57候(今年は11月18日から22日)を迎えました。
七十二候とは立春を第一候とし、二十四節気をさらに約5日ずつの3つ(初候・次候・末候)に分けた期間のことで、気象の動きや動植物の変化を知らせるものです。二十四節気が古代中国で作られたものをそのまま使っているのに対し、七十二候は日本の風土に合うように改められています。現在は、明治7(1874)年の「略本暦」に掲載されたものが主に使われているそうです。
第57候の名称は、「金盞香(きんせんかさく)」です。
漢字やよみからは、金盞花(きんせんか)を連想してしまいそうですが、水仙が咲き芳香を放つ頃ということです。「金盞」は金の盃のことで、水仙の黄色い冠を見立てているのだそうです。
我が家の水仙はまだ咲いてはおりません。
例年、12月下旬ごろにならないと咲きません。蕾もまだまだです。
水仙の香りはもう暫くお預けです。
余談ですが、水仙の原産地は地中海周辺で、日本には室町期以前に中国から伝わったそうです。学名はNarcissus(ナルシサス)で、ギリシャ神話に登場するナルキッソスという美少年が由来とされています。
もうお気づきのことと思いますが、ナルシストの語源となっています。
ナルキッソスはそのあまりの美しさから周囲の女性を虜にし、多くのアプローチを受けます。しかし高慢な性格と自分の美しさを鼻にかけていたナルキッソスは、決して誰かを愛そうとはしませんでした。
その態度に怒りを覚えた復讐の女神ネメシスによって、自分しか愛せない呪いをかけられ、水面に映った自分に恋をすることになります。
やがて、恋する気持ちで食事もできなくなったナルキッソスは憔悴して息絶えてします。その姿が水辺でうつむきながら咲く水仙の花に変わったのだそうです。
自信を持つことは大切なことです。しかし、自己肯定感も度が過ぎると高慢になり、「うぬぼれ」ということになりかねません。さらに他を受け入れなければ、「エゴイスト」にも通じることになります。
やはり、その時々の物事を判断する上でどちらにも偏らず、かつ通常の感覚で理解できること。自分を認めることとともに、他をも認めることが大切なのでしょう。
可憐な花を咲かせる水仙にも、謂われがあるのですね。
西行は、
花見ればその謂われとはなけれども心のうちぞ苦しかりける
と詠み、花鳥風月、雪月花(せつげっか)、様々なものの中に「哀惜」があるといいます。
西行の境地には遠く及びませんが、
何事も、ほどほどにしておかないと・・・