学校日記

潮風ニュース189号より「海とみかんの里鑑賞会を開催しました」

公開日
2023/11/07
更新日
2023/11/07

校長室から

10月25日(水)の学校公開日に「海とみかんの里鑑賞会」を開催しました。この鑑賞会は片浦地区の自治会から支援をしていただいて開催しているものですが、コロナ禍で地域や保護者の方に参観してもらうことができていませんでした。今年度は運動会同様、児童だけでなく地域・保護者の皆さんにもご参観いただきました。
2022年の東京パラリンピックの閉会式にも出演されたポップバイオリニストの式町水晶(しきまち・みずき)さんをお招きして、バイオリンの演奏と講話をいただきました。
 はじめに「脳性まひ」という病気のことについてもお話くださいました。3歳で脳性まひと診断され、そのリハビリのために4歳でバイオリンを始めたこと、障がいがあるということで小学生の時につらいいじめにあったこと、様々な難しいことも「バイオリニストになる」という夢があったから乗り越えられたこと、そのお話一つ一つが、とても重いものでしたが、式町さんは終始笑顔でお話してくださいました。しかしお話の後半で「皆さんには大切な人はいますか?」と語られた後、ぐっと涙をこらえる姿がありました。実は、式町さんを小さいころから支えてこられた祖父の清美さんが、2日前に亡くなったと明かされました。子ども達には「私たちの命には限りがある。どんなに大切な人とも別れなくてはならない日は必ずやってくる。みんなにも大切な人がいると思う。その人との一日一日はかけがえのないもの。精一杯楽しんでほしい。大切にしてほしい。」とお話しくださいました。そして「人に優しくすることは大切なこと。でも何より自分のことを大切にしてほしい。そうすれば夢もかなうし、周りの人も笑顔にできる」ということもお話くださいました。
 この日、マネージャーでもある式町啓子さん(水晶さんのお母様)から、啓子さんの著書をいただきました。水晶さんの病気、障がい者への差別や偏見など、ご苦労が多かったからこそ、周囲への気遣いや人を思いやる優しさ、コミュニケーション力の高さ、豊かな感性などが水晶さんには備わったのだろうということがわかりました。こうした水晶さんの力を育てたのは、何よりも啓子さんが息子さんの力を信じ、何が彼にとって大切なのか必要なのかを考え、ともに行動されてきたからだと思いました。いただいた本は学校図書室に置きますので、ご興味がある方は学校図書室へどうぞお越しください。
 最後に、啓子さんのご著書「脳性まひのヴァイオリニストを育てて〜母子で奏でた希望の音色〜」(主婦と生活社)の一部を紹介します。
 そんな明るくて人なつこい水晶を見ていて、彼が生きていくうえでいちばん大切なのは、その「コミュニケーション力じゃないかな」と思いました。持って生まれた彼の優れた能力を、もっともっと伸ばしてあげたい。人と人との心が通じ合ったときに、お互いの心の優しさや慈しみが生まれて、人とのつながりが、これからの水晶を救ってくれるのかもしれない。そして、水晶もまた、たとえ障がいがあっても、誰かのために心をくだいて、人を助ける喜びを味わうことができるかもしれない。それは、強い希望の光のように思えました。
 多かれ少なかれ人と人との関わりの中で私たちは生きています。コロナ禍やSNSの普及により、他者との関係のつくり方が難しくなっている現代において、人とつながるということの意味、周りを笑顔にすることが自分の幸せにもつながっていく、ということを思いました。