図書室だより2019 〜その18〜

画像1
「線は、僕を描く」
(砥上裕將 著  講談社)

 2020年の本屋大賞にノミネートされているこの作品は、青春小説には珍しい水墨画がテーマ。高校時代に両親を亡くした大学生・青山霜介はアルバイトをきっかけに水墨画の巨匠に見初められ、次第に水墨画の世界に魅せられていきます。

 物語の中に大きな事件は起こらないものの、主人公の抱える孤独や虚無感が水墨画を通じ生きる力へと変わってゆく感動は、静かな余韻とともに読む人の心にじわっと広がっていきます。 著者の砥上氏は若き水墨画家でもあるので、水墨画の持つ大胆さ、繊細さが美しさを伴い絶妙に表現されており、読んでいると実際に水墨画を眺めているかのような臨場感が味わえると思います。  本屋大賞の発表は4月7日。ノミネートは全部で10作品ですが、はたして大賞をとるのはどのような小説でしょうか。楽しみですね。

 今回の本紹介が今年度の最終回となります。国府津中の図書室にはホームページでは紹介しきれない魅力的な本がたくさんありますので、生徒の皆さんには今後も図書室を多いに利用し、感動の一冊に巡り合ってもらえたらと思います。

図書室だより2019〜 その17 〜 3月11日(水)

画像1
「原発事故に立ち向かった吉田昌郎と
      福島フィフティ」  
 (門田隆将 著 PHP研究所)

 今年もまた3月11日が巡ってきました。東日本大震災から9年経つ今も、原子炉内に溶け落ちた核燃料や高濃度汚染水の収束作業が進められており、東京電力福島第一原発の事故がどれほどの衝撃だったかを物語っています。
 この本で描かれているのはその原発事故の現場に残り、原子炉建屋への突入・注水を必死に続けた“福島フィフティ”と呼ばれた人々の姿。未曾有の事故の裏で死を覚悟しながら作業を続けた彼らがいたからこそ、現在の日本が存在していると言っても過言ではないでしょう。当時は、作業員が所長命令を無視して逃げ出したというデマすら報じられました。情報を鵜吞みにして事の真実を見極めず、他人を傷つけるという風潮は9年経った今も変わらないのかも知れません。
 映画「Fukushima50」も現在上映中。本も映画も衝撃的ですが、ぜひ若い世代に見てもらいたいと思います。

1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31