図書室だより2020 〜その16〜

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「希望の牧場」(森絵都 著  岩崎書店)

 東日本大震災から丸10年。今回紹介するのは、福島第一原発の警戒区域内に取り残された実在の牧場がモデルとなった絵本です。警戒区域内では牛約3500頭、豚約3万頭が飼育されていましたが、住民への避難指示により世話ができなくなり、その半数は餓死。残った家畜は殺処分の指示が出されました。
 牛の殺処分に同意をしてほしいと役人に言われても、同意をしなかった主人公。食用にならない牛に餌を与え育て、何になるのか。売れない牛を生かし続けるのはバカみたいなことなのか。主人公の牛飼いがつぶやく、『ここには絶望しかないような気もする。希望なんてあるのかな。な、オレたちに意味はあるのかな?』。この10年で少しずつ前に進んできた東北ですが、まだまだ壮絶(そうぜつ)な苦しみの中で生きなくてはならない人々がいることを忘れてはなりません。
 図書室では年度末の閉館まで震災本コーナーを設けているので、多くの皆さんに手に取ってもらいたいと思います。

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