図書室だより〜9〜

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今年度、最後の図書室だより:
 学校司書さんによる本の紹介です。

「魂でもいいから、そばにいて」
    (奥野修司 著 新潮社)

 前回に引き続き、今回も東日本
大震災に関する本を紹介します。
 
 この大きな震災で家族や友人を亡くされた方の中に、霊的と言える不思議
な体験をされた方が多くいたというのはメディアでも取り上げられていまし
たが、これはその時の体験談を綴った一冊です。
 津波で流された祖母が微笑みながら縁側に座っていた、逃げ遅れて落命し
た叔父の携帯電話に電話をかけてみたら叔父の声が聞こえた、
「行ってきます。」と言ったまま学校から戻らなかった息子のおもちゃが
勝手に動き出した、など。
 
 読んでいて印象的なことは、どの話も不思議ではあるものの怖くはないということ。そして、不思議な体験をしたことで生きる勇気が湧いてきたと語る方が多いこと。絶望の日々の中、亡くなった大切な人の姿や気配を実際に感じられたことで、これからの人生に立ち向かってゆく活力を得られたのでしょう。肉体がなくなってもなお、魂は人の心に生き続けているのだと思います。 
 少し重い本を2回続けて紹介してきましたので、次回は春らしく、明るい小説などを紹介できれば・・・と考えています。


図書室だより〜8〜 3月7日(木)

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「遺体」(石井光太 著  新潮社)
 
 まもなく3月11日。日本を一瞬で
変えてしまったあの日が今年もやって
きます。
 今月は2回続けて東日本大震災に
関する本を取り上げたいと思います
が、今回は震災から3年後に書かれた
石井光太氏のルポタージュを紹介しま
す。
 安置所に次々と運び込まれる遺体の
対応に追われる医師や市職員、遺体
搬送や火葬の問題に東奔西走する消防
団員や民生委員。
誰もが時が流れるままに過ごしてきた
のではなく、目を背けたくても
現状と向き合って乗り越えなければならなかった壮絶な現実が切々と、
そして淡々と綴られます。

 ※ 被害を目の当たりにした東北の人々から見れば、これほどに生々しい描写でさえ、震災後の悲惨さすべてを物語るには程遠いかも知れません。私たちが知っている被災の状況はほんの一部なのだと痛感させられます。遺された人々には悲しむ余裕さえなかった、との表現がまさに心に突き刺さる一冊。ぜひ読んでください。

 

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