図書室だより 〜No,4〜

「死体が教えてくれたこと」 (上野正彦 著 河出書房新社)

 前回「どう解く?」本をご紹介した流れで、今回も道徳・哲学に関連する本をご紹介します。

 今回の本は14歳の世渡り術シリーズの中の1冊で、一瞬ドキッとしてしまうタイトルですが、監察医としてこれまでに2万体の検死解剖を行ってきた上野氏が10代に向けて書かれたものです。ほんの少しの外傷や証拠をもとに物言わぬ死者からの悲痛な声を聞き、死の真相を突き止める上野氏の観察力・洞察力は見事!死んだ人は嘘をつかない、生きている人間のほうが怖い、との記述には、思わずうなずいてしまいます。「あしたのジョー」(ちばてつや著)の有名なラストシーンを、監察医の目から真剣に解説しているのも非常に興味深いところ。
 与えられた命の大切さを切々と説く著者のひとつひとつの言葉が、この本を読む若い世代の心に響くといいな、と思います。


図書室だより 〜No,3〜

「どう解く?」(やまざきひろし著 ポプラ社)

 来年度から道徳は「特別の教科 道徳」になります。それに先駆けて今年から道徳の研究に取り組んでいる学校も多いようです。
そんな道徳の導入期にタイムリーな「どう解く?」の本をご紹介。

 絵本というには絵が少なく、哲学書というほど難解な本ではありませんが、問いかけている内容は非常に深いものがあります。
ケンカをしたら怒れらるのに、なぜ国と国とのケンカは誰も怒らないの?
ネコは殺しちゃいけないのに、なぜ昆虫は殺されて標本にされているの?
ついていい嘘と悪い嘘、何が違うの?    などなど。
 小学生向きに書かれていますが、大人でも一辺倒では答えの出ない問題がつぎつぎと出題されます。
中学生ならどんな答えを出すのかも興味深いところ。
それぞれの問いに対して小学生のさまざまな意見、そして大人の意見も載っており、どれもなるほど…と思えます。
答えの出ない問題に、皆さんもぜひチャレンジしてみてください。


図書室だより 〜No,2〜

「旅猫リポート」 有川浩 著

 とある事情により手放さなくてはならなくなった愛猫のナナとともに、新しい飼い主を探すため日本中を旅する青年・サトルの物語。クールでツンデレなナナの目線で綴られてゆくエピソードからは、サトルがどれだけ周囲に愛されてきたか、そしてサトルがどれだけナナを愛していたかが痛いほどに伝わってきます。

 1人と1匹の旅の最後は、目の前に広がるかのような美しい情景で締めくくられます。ナナというかけがえのない存在を大切に思い続けたサトル青年、そして最後までサトルに寄り添ったナナ。読み終えたあと、哀しいながらも切なくて温かい気持ちになれる小説です。中学生の皆さんがこの作品に触れることで、動物と人とのつながりや絆を考える機会となれば良いかと思います。

 有川氏のおすすめ作品はこのほか「ストーリー・セラー」「キケン」「県庁おもてなし課」など。

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