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| 小田原の植物概観 小田原は、箱根の玄関口に当たり、江戸時代よりこのかた、わが国内外の多くの研究者が訪れもし、また、地元の研究家によって、調査、研究がなされ、その成果が数多く発表されている。 小田原付近では、どこへ行っても、ベニシダ、シラカシ、アラカシ、スダジイ、タブノキ、シロダモ、クズ、テイカズラ、ヤブツバキ、ヒサカキ、アオキ、ヤブラン、シュンランなどの暖帯林域の標徴種の自生品に遭遇できるし、二次林では、クヌギ、コナラ、イヌシデが見られるし、栽培種では、チャノキが見られるので、当然のことながら、常緑広葉樹の繁茂する暖帯に属するという断定をくだすことができる。 恐らく、この辺りの殆どの平地や丘陵の地表は、もともとは今あげたような、暖帯林の樹木や草本で、うっそうとしていたであろうと想像される。 ところが、平地は農耕地や工場、住宅、道路などに、海に面した丘陵地は主としてミカン畑に、箱根外輪山の西麓部は、スギやヒノキの植林地として、農業や林業などの発展にともなう開発によって、現在見られるような姿に、変ぼうを余儀なくさせられてしまった。 従って、広大な残存林は皆無で、わずかに社寺林や祠の周囲が、受難の対象からはずされ、点在しているにすぎない。だが、小田原では、うっそうとした昔の姿を今に伝えて、すばらしいと思えるのは、県の天然記念物に指定されている小田原高等学校の叢林、および市の天然記念物に指定されている前川の近戸神社、長興山ならびに早川の紀伊神社の叢林である。 しかし、市内の各所で、北限自生地に近い、イヌマキ、イタビカズラ、ヤマモモ、イチイガシ、イヌビワ、ヤナギイチゴ、オオバヤドリギ、オガタマノキ、ビランジュ、モクレイシ、ホルトノキ、ナワシログミ、リュウキュウマメガキなどの暖帯林の樹木に巡り合えたり、シダ植物のハチジョウシダモドキが観察できるのも、植物の上での小田原の魅力である。 また、昭和59年12月に小田原だけで「かながわの名木100選」に十種類もの名木が選ばれたのは、視点を変えて見れば緑の保存状況がよかったことを物語る何よりの証拠で、このことも小田原の誇りうることのように思える。 相模湾に面した海岸には、規模的には狭あいであるが、海浜植物が連続的に成育し、その中でも、山王海岸は規模も生育種数も最大で、ハマヒルガオ、コウボウムギ、ケカモノハシなどの群落が見られ、ツルナ、ハマエンドウ、ハマボウフウなどが散見できる。それらの後部には、トベラ、カヂイチゴ、オオバイボタが続く。 早川から、片浦にかけての磯には、ところどころに海食崖があって、ラセイタソウ、ツルナ、ハマヒルガオ、アシタバ、ツワブキ、イソギク、イワトユリが生育し、続いて、オオバヤシャブシ、シロダモ、トベラ、オオシマザクラ、カヂイチゴ、キブシ、マルバグミ、ヤツデ、ハコネウツギ、ハチジョウススキが、林床には、オニヤブソテツ、アスカイノデが生育している。 酒匂川に沿った平野部は、水田雑草を観察する最適の場所で、春の水田には、ノミノフスマ、ケキツネノボタン、タネツケバナ、レンゲ、キツネアザミ、カズノコグサ、スズメノテッポウなどが、夏の水田には、チョウジタデ、アブノメ、タマガヤツリ、イボクサ、コナギなどが見られる。 酒匂川の河原には、かつての流路と思われる場所に7種の柳類が、現在の流路には、オオイヌタデ、ミゾソバ、マコモ、ヨシなどが、中央の河原には、イヌドクサ、カワラホオコ、カワラヨモギ、ツルヨシなどが生育している。 また、河原の畦畔全面に、オオブタクサやアレチウリなど帰化植物が、近年在来の植物を制して、侵入している状況も観察できる。 また、この地域は、「フォッサマグナ地域」に属しているため、シバヤナギ、ガクアジサイ、マメザクラなど、この地区の固有の植物も生育している。 そのほか、気候が温暖で、年間の降雨量が多いことと、丹沢・箱根・伊豆に接しているため、シダ植物の生育種数も多い。 |
| このCDは、小田原市教育研究所が昭和62年(1987)に発刊した「小田原の植物」を元に作成したものです。したがって、現状とは異なるものもありますので御容赦ください。 なお、画像・文章などの転載は許可なく行わないでください。 |
| 凡例 ヨモギ(飯田岡)<60・9> → 種名(取材地)<(昭和)年・月> |