〜言葉を獲得する力を育てる保育〜
| 1 研究主題設定の理由 人間は生まれたその時から、言葉とのかかわりを欠かすことはない。言葉は、私たちの毎日の生活の中でとても 大切な役割をもち、あらゆる場面で表現する手段となっている。言葉を交わすことにより、自分の気持ちを表し、伝え 、また互いに理解し合うことができる。言い換えれば、人とのかかわりの中から、言葉は自然に生まれてくるものであ る。それゆえ、言葉は、人と人との間に絆を生み、心のかけはしとなる大切なものであると同時に、幼児に社会性が 培われていくうえで極めて重要なものとなってくる。また、幼児にとって言葉を獲得するということは、正しい言葉を 覚え、話すようになるだけでなく、その過程で、人とのかかわりをもち、愛情や信頼など人間性を培っていくことにもつ ながる。 しかし、近年では、社会のみならず、家庭内でのコミュニケーションの変化が大きく目立つようになってきた。近隣の 人との触れ合いの減少や共働き、核家族化、少子化などの傾向から、家族の触れ合いが密になりすぎたり、逆に 疎になってしまったりなどの現象が見られるようになってきた。また、自然の中で伸び伸びと遊ぶ、近所の友達と遊ぶ など、経験を分かち合う機会も少なくなっている。 そんなことが背景にあってか、最近の園児を見ても、テレビの影響を受けやすく、流行語をすぐに使ったり、乱暴な 言葉遣いをしたりする幼児が増えているようだ。また、周囲の人に対して、自分の考えや気持ちを言葉で表現できず 、友達とかかわる楽しさを十分に味わえなかったり、乱暴な態度をとってしまったりなど、どのようにして気持ちを伝え たらよいのかわからない様子も見受けられる。 では、幼児がいろいろな言葉に出会い、その言葉の響きや美しさを感じながら、人と話すことの楽しさに気付いてく れるようになるには、教師はどのように援助をしたらよいのだろうか。幼児は、多くの言葉の刺激が満ちあふれている 生活環境の中で、言葉を自分のものにしていく。それぞれ違う生活環境・言葉の環境の中で育ってきた一人一人の 幼児が、初めて出会う幼稚園という集団の中で、人と言葉を交わし、気持ちを伝え合っていくことは簡単なことではな い。しかし、毎日の園生活の中で、創造的に遊び、友達や教師とのかかわりを深めていくためには、“言葉”はとても 大切なものである。人間としての生きた言葉、温もりのある言葉を獲得していくために、私たち教師は、幼児の生活の 実態や発達の特性に沿う、系統性をもつ言語環境を整えていく必要があると考えた。 そこで私たちは、「領域“言葉”」に視点をあて、“言葉を獲得する力を育てる保育”について研究を進めていくことに した。 |